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モーター制御 ~通電制御の実装結果

2025年1月13日月曜日

18. モーター制御

t f B! P L

はじめに

前回は、矩形波駆動でのステータコイルの通電制御について説明しました。不要なフライバック電圧が発生しない通電制御が成立しそうです。

今回は、検討した通電制御を実際に実装し、デジタルオシロで観測した電圧・電流波形について書いていきます。

実装した通電制御

実装した通電制御は矩形波駆動です。まずは、検討した通電制御で想定通り作動するかを確認するため、給電のためのPWMは固定Duty値とし、オープンループ制御で一定回転数で回してみます。

設定項目 設定値 参考情報
PWM周期 20 kHz  周期割り込み処理を起動 
Duty値 20 %
回転数 714 rpm  60sec/(2ms×6stage×7)

今回のDCブラシレスモータは、ロータの永久磁石 N極/S極が 14極 7ペア、ステータは12スロット です。

前回書いたように、各STAGEでの通電制御は以下のようにしました。

   PWM   PWM作動
相補 PWMの相補作動。スイッチングに伴う誘導電流をローサイドアームで還流。
   OFF    通電相の切り替えに伴う誘導電流をローサイドアームのボディダイオードで還流。
    ON     ローサイドアームをONして励磁電流、誘導電流をGNDに流す。
相補 PWMの相補作動。スイッチングに伴う誘導電流をハイサイドアームで還流。
   OFF    通電相の切り替えに伴う誘導電流をハイサイドアームのボディダイオードで還流。
    ON     ハイサイドアームをONして給電及び誘導電流を流す。

実装した結果

上記の矩形波駆動の通電制御を実装したところモーターは回っています。
回っている様子は、こちら→リンク 

その電圧・電流波形をデジタルオシロで確認したので説明していきます。

U/V/W の各通電相の電圧(U:黄, V:青, W:オレンジ)とU相の電流(シャント抵抗電圧:緑)の様子です。シャント抵抗は0.33Ω。シャント抵抗電圧はオペアンプで2倍増幅されています。

STAGE1

STAGE1の励磁電流の通電経路

STAGE1 → STAGE2 電圧・電流波形

  1. STAGE1では、U相はPWM 20%。PWM ON直後は給電している電圧になるが、励磁連流が増えるとMOSFETのON抵抗による電圧降下で電圧波形は下がっていく。
  2. PWM OFF直後は、ローサイドアームのボディダイオード経由で還流電流が流れるので、GND電位に対してダイオードの順方向電圧分マイナス電位になる。
  3. U相PWMの相補作動(OFF)時のみローサイドアーム経由でGND側から還流電流が流れるので、U相の電流はマイナス値として検出される。
  4. STAGE1では、励磁電流がV相経由でGNDに流れるので、V相には MOSFETのON抵抗+ステータコイルの抵抗 と励磁電流の電圧波形が発生する。
  5. U相のPWM ON時には、W相の電圧は、U相からV相への励磁電流経路の中間ポイントになるので、給電電圧の半分の電圧が観測される。
  6. U相のPWM OFF時はGND電位で還流電流が流れる。
  7. STAGE1→STAGE2では、励磁電流をGND側に流していたV相のローサイドアームがOFFになる。このときV相のステータコイルを流れていた励磁電流は、ハイサイドアーム側を還流するため、STAGE2の最初のV相電圧は、ボディダイオードの順方向電圧分、給電電圧よりも高くなる。

STAGE2

STAGE2の励磁電流の通電経路

STAGE2 → STAGE3 電圧・電流波形

  1. STAGE2ではU相はON(PWM 100%)。励磁電流はW相でPWM制御する。U相の電圧は給電電圧になるが、W相のローサイドアームがPWMでONになる20% Duty区間で励磁電流が増えるため、MOSFETのON抵抗による電圧降下でU相の電圧波形は下がっていく。
  2. W相のローサイドアームのPWM ON時には、V相の電圧は、U相からW相への励磁電流経路の中間ポイントになるので、給電電圧の半分の電圧が観測される。
  3. W相のローサイドアームのPWM OFF時は給電電位で還流電流が流れる。
  4. U相がON(PWM 100%)となって給電され、W相の電圧波形はローサイドアームがPWMでONになる20% Duty区間にGND電位になる。
  5. STAGE2ではU相のローサイドアームには電流は流れない。
  6. STAGE2→STAGE3では、励磁電流を流していたU相のハイサイドアームがOFFになる。(下のSTAGE3の励磁電流の通電経路の図の青→)このときU相のステータコイルを流れていた励磁電流は、ローサイドアーム側を還流し、U相の電流はマイナス値として検出される。
  7. U相の還流電流のため、STAGE3の最初のU相電圧は、ボディダイオードの順方向電圧分GND電圧よりも低くなる。

STAGE3

STAGE3の励磁電流の通電経路

STAGE3 → STAGE4 電圧・電流波形

 通電相が違うだけで、STAGE1 → STAGE2 の電圧波形と同じ。

STAGE4

STAGE4の励磁電流の通電経路

STAGE4 → STAGE5 電圧・電流波形

 通電相が違うだけで、STAGE2 → STAGE3 の電圧波形と同じ。

  1. 励磁電流はGND側のU相でPWM制御する。U相のローサイドアームがPWMでONになる20% Duty区間のみ励磁電流を検出できる。

STAGE5, STAGE6

STAGE5の励磁電流の通電経路

STAGE6の励磁電流の通電経路

STAGE5 → STAGE6 電圧・電流波形

  1. STAGE5では、U相ローサイドアームがON(PWM 100%)になるため、励磁電流をU相シャント抵抗で検出できる。

励磁電流

STAGE5→STAGE6 電流波形


STAGE6→STAGE1 電流波形

実装結果のまとめ

不要なフライバック電圧の発生もなく、電圧・電流の挙動も想定通りでした。
細かいことを書き始めるときりがないので、矩形波駆動の通電制御については以上にします。

ここまでお読みいただきありがとうございます。

次は、実装の詳細についてなど、書こうか、どうしようか。。。

モーター制御については全くの初心者なので、間違いにお気付きの方は末尾のコメント欄からご指摘いただけると幸いです。


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