状態方程式から離散化した逐次式へ で求めた離散化した逐次式
を用いてCR回路の時間応答の確認(シミュレーション)をしていきます。
CR回路モデル
入力:印加電圧 V_{b}
出力:キャパシタの電圧 V_{c} とすると
V_{b}=IR+V_{c} \hspace{1cm} I=C\frac{dV_{c}}{dt} より、状態方程式は
\frac{d}{dt}V_{c}=-\frac{1}{CR}V_{c}+\frac{1}{CR}V_{b}
離散化した逐次式x(t+Δt)=Px(t)+Qu(t)のPとQは、下に示しているようにExcelの表計算シートで計算できます。また、状態方程式を離散化した逐次式にすることによりExcelでのシミュレーションが容易になります。
EXCELファイルのダウンロード
こちらのリンク→ CR回路モデル からExcelファイルをダウンロードできます。
状態方程式のシートでは、上記のように離散化した逐次式のPとQを計算しています。
CR回路モデルでは、AとBは行列ではないですが、Excelでの計算は1×1の行列として扱い、逆行列(MINVERSE)や行列の積(MMULT)といった関数を使っています。
時間応答の確認
Excelのシミュレーションのシートでは、状態方程式のシートで計算したPとQを使い、下に示すように逐次式x(t+Δt)=Px(t)+Qu(t)によって時間応答を計算しています。Excelの1行が離散時間Δtです。
上部のスライドボリュームで抵抗値Rや静電容量Cを変更すると時間応答の変化を確認することができます。
一次遅れ系
CR回路モデルは一次遅れ系と呼ばれます。一次遅れ系は使う機会が多いのでここで説明しておきます。
一次遅れ系は入力に対して遅れて追従するシステムで、状態方程式は次の式になります。
\frac{d}{d t} x=-\frac{1}{T} x+\frac{1}{T} u \hspace{2cm} (A=-\frac{1}{T} \hspace{0.5cm} B=\frac{1}{T}) Tは時定数と呼ばれ、ステップ入力の場合、T秒後の時間応答が63.2%になります。
逐次式では
x(t+Δt)=Px(t)+Qu(t) P=e^{A \Delta t}=e^{-\frac{\Delta t}{T}} Q=A^{-1}\left(e^{A \Delta t}-I\right) B=1-e^{-\frac{\Delta t}{T}}
一次遅れでは、AΔt が行列ではないため、Pade近似 を使わなくてもPとQを計算できてしまいます。ここでe^{-\frac{\Delta t}{T}}=\alphaとおくと逐次式は
x(k+1)=\alpha x(k)+(1-\alpha) u(k)時定数2secで離散時間100msの場合
\alpha=e^{-\frac{\Delta t}{T}}=e^{-\frac{0.1}{2.0}}=0.951229 \ldots
一次遅れ系の逐次式は利用機会が多いため覚えておくと便利です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次は、状態方程式のAとBが行列になる簡易的な車両の走行モデルで時間応答を確認します。
→車両走行モデルの時間応答の確認
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